本当に、嘘が下手だな。 大切なわけがない、と必死で叫んで訴えているにもかかわらず、体中が嘘だという。 唇が戦慄き、瞳は不安にゆれ、足元はゆらゆらとおぼつかない。これ以上ないというほど顔面は蒼白で、今にも倒れこんでしまいそうに脆い。 嗚咽を呑みこみ、声をつまらせながら、それでも違うと叫ぶ。 「勝手に引っ張られていただけで、好きで蜘蛛にいたわけでもないし、そもそもそんな人どうなったってかまいません! わ、私には、私には……」 私には関係ない、というその一言を、は言い切ることが出来ないでいた。たった一言の言葉を、唇から落とすことが出来ないで居る。知られたくないと嘘をつくくせに、肝心な言葉を言いたくないとごねている。 ……。 レオリオは思わず目をつぶった。やめてくれ、もう聞きたくない。もうたくさんだ。嘘をついているのに、嘘を突き通すことができずに、そしてその嘘を真実だと思われてしまうのも嫌で、だけど本当の事も知られたくない。 そんな矛盾があの細くて頼りない体をがんじがらめに縛り付けて身動きを封じている。縛られる力に抵抗しようと震えるだけになっている。 「クラピカ、もう……」 やめてくれ。十分だろうが。 だがクラピカは、レオリオの懇願を無視した。静かに尋ねる。だがその静けさは、一瞬前に起こる奇妙なものと同じ。 ではなぜ、と問いかけたクラピカに、が言葉を詰まらせた。分かっているんだろう、クラピカ、見れば分かるだろうが。 は、おまえが憎くて憎くて仕方のない男を、必死で助けにきたんだ。 そうだろ? そしてとうとう、一番聞きたくてでも聞きたくなかった、聞けなかったことを、きっと彼女がずっと疑問に思っていただろうことを、ヒソカが尋ねてしまった。 「必死に嘘をついているけど、君はどうなんだいクロロ。一過性の興味でしかないんだろう?」 しん、と静まり返った。聞きたくないと体を震わせながら、だがは、耳をふさぐことも顔をそらすことも出来ていない。 「俺には関係ない」 がためらい、最後の最後まで口に出来なかった全てを断ち切る言葉を、男がするりと舌にのせた。何のてらいも、なかった。がまるで、その言葉に押されたように、よろりと下がった。 レオリオは、見てしまった。今まで歪んでいたの顔が、音がたったかのように凍りついたことを。だがそれは、一瞬だった。頭の重さに耐えられないというように、ふらりとうつむいた。その瞬間に、涙が零れ落ちる。 そしてすぐに顔をあげた。笑っていた。笑っていたのだ。 目が、あんなに傷ついているのに。 頬に、涙が一筋滑った跡がついているのに。 唇が、血の気を失って乾いているのに。 其の先を、口にするなと、レオリオは、だからといって足など動かないくせに、声など聞こえない場所で、、とつぶやいた。 「関係なんかないです、私とクロロさんはかんけい、ない。そうでしょう?」 うふふ、あはは。 かんけい ないんです わたし と くろろさん は かんけい なんか ない ああ、聞こえる。痛くて痛くて泣く声が 苦しくて苦しくて呻く心が。
零 脱稿 21:29 2008/06/11 本編74話のside:レオリオ。どの話のレオリオ視点なのかは記載されてなかったのですが、このタイトルでこの話かしら、と思ってしまいました。 タイトル提供ありがとうございます!記念すべき5周年企画第一弾でした。 エダージェへ愛を誓う:乙部メイ お持ち帰りはこちらから |